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【海の底】小説版の感想とあらすじ。海上自衛隊ファンは必読!?

海の底のあらすじと感想オススメ図書

有川浩さん小説「海の底」の感想とあらすじを紹介しています。

海上自衛隊ファンの皆さん、必見です!

海の底 小説版って?

「シン・ゴジラ」によく似た政治的なバトルと、「15少年漂流記」を海上自衛隊にぶっこんだらこんな話、という感じです。

有川さん、15年も前によくこんな発想と展開を考えましたね!?と今でも思っています。

 

初めて読んだ時には震えました。

三時間、身動きもできないままに一気読みした時の興奮は今でも覚えています。

 

彼女の作品にしては珍しく、男臭い場面が多い物語です

文庫版では一連の対・レガリス戦の前日譚「前夜祭」も掲載されており、また、ここから生まれたスピンアウト二本「クジラの彼」「有能な彼女」があります。

 

海の底の簡単なあらすじは?

横須賀の第二潜水隊分司令、潜水艦埠頭に停泊していたおやしお型潜水艦、十一番艦『きりしお』に、ヤンチャで知られた新人幹部がいました。

夏木大和三尉、冬原春臣三尉です。

防衛大を卒業してほどなく、実習幹部として乗り組んだこの艦で、彼らはとんでもない戦いを経験することになったのです。

 

その敵は“レガリス”___例えるならば、人より少し大きいサイズに巨大化したザリガニのような生物が、大挙して横須賀に上陸し、来襲。

夏木たちは、桜祭りのイベントで一般に開放されていた基地の中を逃げ惑う人間が貪り食われる惨状を目の当たりにしたのです。

 

非常事態に、艦に残っていた乗員を全員上陸させて避難を…となったとき、夏木と冬原、そして艦長の川邊の前に、逃げ惑う子供たちの姿がありました。

迷わず、彼らを『きりしお』に匿う中で、庇った川邊艦長が殉職。

その日から、夏木と冬原は高校三年生の森尾望という少女と、12人の小中学生の男子を含めて15人で艦内に籠城することになったのでした。

 

さて、その頃、神奈川県警の明石亨警部はパソコンの掲示板にアップされていた横須賀の非常事態と惨劇に、機動隊を派遣しようと試みました、が。

人間の力では阻止することが難しいレガリスに対して、警察はかつてない苦闘を強いられることに。

海上自衛隊、神奈川県警、日本政府、そして米海軍。

さまざまなしがらみのなかで___これは、人類が初めて巨大不明生物と戦うことになった数日間の物語です。

 

海の底の登場人物は?

夏木大和

海上自衛隊・三等海尉

潜水艦『きりしお』実習幹部。

やることなすこと海上自衛隊始まって以来の規格外とされ、冬原とコンビで“問題児”扱いされるが、実は大変有能な資質を秘めていた。

“レガリス”に追われて逃げ惑う子供たちを艦内に誘導し、保護することになる。

 

冬原春臣

海上自衛隊・三等海尉

潜水艦『きりしお』実習幹部。

夏木と同様に問題児として川邊ら幹部らにいつも叱られているが、めげずにいろいろやらかしている。

顔がイイらしく、夏木よりはモテる。

一見、人当たりが良いが、実はとてもクールで正論を繰り出し、熱血漢の夏木よりはるかに容赦がない。

 

川邊(かわなべ)艦長

一等海佐

夏木・冬原が搭乗していた潜水艦『きりしお』の艦長。

問題児の夏木・冬原コンビのやりたい放題な惨状に頭を悩ませつつも、彼らの資質を買っていた。

潜水艦乗りには出会いがない、という実情に鑑みて、姪っ子に頼み、その友人らを集めて部下たちとの合コンを企画するなど、実は気配りと親心に溢れた人物で、多くの人に慕われていた。

 

森尾望

高校三年生の女子。

近所の子供たちを引率して訪れた米軍横須賀基地の桜祭りでレガリスの襲撃に遭遇、弟の翔(かける)らとともに『きりしお』の艦内に取り残されてしまう。

複雑な家庭環境からコンプレックスが強く、いろいろと思い悩んでいたが、夏木と出会って人生が変わる。

 

 

海の底の名言

名言1

「見届けろ。あの苦闘の上に自衛隊が出動することを胸に刻め」

文庫版330頁

 

巨大生物に神奈川県警が対抗しきれないことが証明されて初めて___自衛隊の出番がやってくる。

政治的な問題、省庁間の対立・反目の末に現場が強いられているギリギリの最前線で、そこに立つ者だけが見る風景、そして発する言葉です。

警察の壊走の果てに渡されるだろうバトンを受け取る立場の自衛官・金岡の言葉は、ずしりと重たく残りました。

名言2

「まぁ、そう言うな。___今日本で有事が起こったとすれば、海自の実習の中で一番使い物になるのはウチの悪ガキどもだ」

文庫版509頁「海の底・前夜祭」より。

 

本編では早々に壮絶な殉職をした川邊艦長が、その前夜に悪ガキ=夏木と冬原の二人を評して言った言葉です。

直接誉めたら図に乗るから、言わない。

でも信頼している。

その気持ちに応えて、二人は後に大いに奮闘することになったのです。

 

海の底を読んだ感想

有川さんの自衛隊三部作の『海』がこの作品です。

あれから15年。

いまではきっと夏木も冬原も立派な艦長に…そろそろなっている頃ではないかなぁ、と思ってしまいますが。

この作品、まだSNSがそれほど発達していない時代で、いわゆる2chがメインだったころのインフラを使っているのですが、古さを感じないのが凄いです。

 

また、有川さんご自身がこの作品を書く際に参考にしたのが当時流行っていたチャットだそうで。

自衛隊、警察、米軍など、ご友人に役を割り振って対レガリス戦をシミュレートして物語を構築する参考になさったのだとか。

大胆に攻撃しようとする米軍役の人を全員で如何になだめるかが大変だった、と有川さんは述懐していました。

 

ええと。

まず、全編通して、プロフェッショナルな警察・自衛隊のおっさんたちがめちゃめちゃカッコイイです。

彼らの言葉は、例えるならば映画『突入せよ!あさま山荘事件』の役所広司さんたちが展開していた会話のようであり、あの作品のキャストさんたちのイメージで読むと、すさまじく萌えます。

 

そして、外の世界でそんな戦いが展開している最中に、『きりしお』の艦内では少年たちの小競り合い、いがみ合いがあり、意外なところで恋が芽生えてしまったり、と、非常に逞しく物語は進んでいくのです。

人生観・死生観を変えてしまうかのような出来事が続く中で、まさに「15少年漂流記」のような、命がけの冒険を、子供たちは経験することに。

 

有川さん…やりたい事、全部ぶっこんだんだろうなぁ、とそのパワフルな筆致に引きずられ、こちらもぐいぐいと引き込まれてその世界に没頭し、貪るように読んだのが昨日のことのように思い出されます。

 

有川さんが書いている自衛隊短編集の表題作「クジラの彼」は、冬原と、川邊の姪が企画した合コンで知り合った聡子さんとの恋の物語です。

そしてもう一作、「有能な彼女」は、この「海の底」を最後まで読んだ人ならわかる素敵なサプライズが詰まっています。

あの戦いを生き延びて(これはネタばらししても良いですよね?)、夏木と冬原は彼ららしく自衛官としての職務を全うしています。

 

さて、妄想キャストですが。

実年齢を考えないのであれば、夏木はキムタクの若い頃、同じく冬原は山Pの以下同文。

リアルなら、ジャニーズの20代半ばのヤンチャなキャラの人を当てはめて読めば間違いないと思います。

声なら、アニメ・図書館戦争シリーズで小牧を演じた石田彰さんを冬原、夏木は鈴村健一さん。

息の合った掛け合いを妄想すると、この辺りがぴったりかと。

 

川邊艦長は…、映画『ローレライ』に出ていたころの柳葉敏郎さんあたりが良いですね。同じ潜水艦モノとして、壮絶な生きざまはとても近いものがあります。

森尾望ちゃんは、広瀬すずさんの深みのある表情が合うだろうなぁ、などと、いろいろな妄想が止まりません。

 

有川さんのいろんな方面への愛がたっぷりと織り込まれた名作です。

いつかまた、がっつり熟成されたこの方面への愛を、さらなる自衛隊シリーズとして書いてもらえないものでしょうか…ファンとしては、祈りながらこの一冊を久々に読み返したのです。

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