「中卒自衛官だとお給料やボーナスはどのくらいなんだろう」
「高卒・大卒の自衛官とどのくらいの差が出るものなの?」
そんな疑問を持ったあなたのために、現役自衛官妻が「中卒自衛官の給料や出世」についてズバッと解説しちゃいます!
中卒自衛官は専門の高校に通う
日本には、唯一“中卒=15歳でなれる公務員”があります。
陸上自衛隊の高等工科学校の生徒です。
これは“自衛隊生徒”と呼ばれ、一般の自衛官と同等の“特別職国家公務員”です。
かつては航空自衛隊・海上自衛隊にも同様の制度がありましたが、それぞれ募集及び課程教育を終了し、2010年(平成22年)以降は陸上自衛隊のみに残されています。
陸上自衛隊・高等工科学校生徒ってどんな制度?
高等工科学校の偏差値は?倍率が高い!?
高等工科学校は、陸上自衛隊・武山駐屯地(神奈川県横須賀市)の中にあります。
募集対象は男子のみに限定されていますが、中学卒業時に「高校受験と同等の試験を受験して選抜されたもの」が高等工科学校の生徒になれます。
偏差値は2019年度で57と言われていますが、例年は大体60前後とのこと。
推薦・一般ともに入試の倍率は10倍程度ですが、東日本大震災の直後ではもっと倍率が高く、テレビなどでも話題になっていました。
最近、「沸騰ワード」などでも特集が組まれたりしますものね。災害で活躍する自衛官の映像もよく流れますし、人気が高まっているようです。
高等工科学校では何を習うの?
高等工科学校では、一般の高校課程と同等の教育を受け、神奈川県立横浜修悠館高等学校の卒業資格を得ることもできます。
また、そうした年齢相応の勉強だけでなく、当たり前ですが、防衛基礎学や専門教育などの陸上自衛隊独自のカリキュラムもあり、さらに全寮制で衣食住全てが税金で賄われます。
卒業するとそのまま自衛官(陸曹候補生)として任官するか、防衛大学校・防衛医科大学校に進学するなど、本人の努力次第でいくつかの進路を選ぶことができます。
高等工科学校生徒のお給料
現在、高等工科学校の生徒たちには月額102,500円(2019年)の生徒手当が支給されています。
さらに、金額はあまり開示されていませんが、一年に二回(6月、12月)の期末手当(ボーナス)があります。
経済的に進学が厳しい世帯などから入学してくる生徒が多く、貯金したり、実家に仕送りしているケースも多々あるそうです。
高等工科学校生徒、卒業後の進路は?
一般の高校と同等に3年で高等工科学校を卒業すると、防衛大学校や航空学生(パイロット候補生)などの受験資格があります。
それ以外には、生徒陸曹候補生課程に進み、高卒としては最短コースで3等陸曹に任官し、定年まで勤めあげられる陸上自衛官になれます。
この時点で、高卒の一般隊員である二等陸士よりアドバンテージがあります。
高卒の曹候補生の試験も大学入試と同等の学力が必要とされており、17~20倍とかなり高倍率になっていますので、その時点ではエリートですね。
さらに、そこから一般幹部候補生への部内選抜試験や、陸曹航空操縦学生選抜試験に合格できれば、将来的に幹部自衛官に昇任することもできます。
高卒・大卒との“差”は?
高等工科学校卒業生はエリート!?
中卒とはいえ、15歳で親元を離れ、“学校で勉強すること”で毎月10万円のお給料をもらえる立場というのはかなり特殊です。
三年間に組まれたカリキュラムはハードですが、それを乗り越えて18歳で“陸曹候補生”、最短コースで三等陸曹に任官するとなれば、自衛隊の中ではかなりのエリートです。
というのも、防衛大や一般大卒の幹部候補生でなければ、普通の入隊者は「高卒・大卒に関わらず一般隊員である二等陸士、または陸曹候補生として入隊」します。
なので、その時点で高等工科学校卒業生は「自衛隊という組織の何たるかを知り、一人の陸上自衛官として働ける」のでかなり好位置にいることになりますね。
中には退学する生徒も・・・・
中にはその流れについていけずに退学する生徒もいますが、卒業生の多くは陸曹として、そして幹部に昇任して自衛隊の組織に貢献している出身者がかなりいます。
優秀な学生を英才教育していることから、ここから将官、政治家、経済界で活躍する人材など多くの著名人が輩出されています。
良く知られている人物としては、軍事アナリストの小川和久氏が挙げられます。
彼は卒業後、陸上自衛官に任官してから大学に入りなおし、ジャーナリストに転じるという異色の経歴を持った人物ですが、そのバイタリティの根源はこうした厳しい教練の日々にあったのではないでしょうか。
自衛官のお給料の決まり方
自衛隊では、高卒・大卒といった区別というよりは、そのスタート時の階級で給料が代わってきます。
高卒でも大卒でも、一般隊員の二等陸曹から始まった場合、初任給は12~13万円。
同様に、曹候補生は16万円程度です。
大卒(防衛大・一般大)の幹部候補生が21万円となります。
19歳で三等陸曹になってバリバリ働いていれば、20代前半で各種手当もついて、21万円を超える給料を手にすることは可能です。
もし自衛隊生徒から曹候補生になり、陸曹に昇任し、部内選抜で幹部候補生になったら、ある程度の年齢で大卒の幹部自衛官にも並ぶといったことも夢ではありません。
しかも若いうち、自衛官は寮暮らしなので衣食住費がほとんどかかりません。そのことから「貯金額がスゴイことになっている」という人が少なくないんですよ。
また、卒業後に防衛大に進んで幹部自衛官を目指すために高等工科学校を選んだという、志のはっきりした学生もいます。
このように、“中卒”とはいえ、高校卒業の資格も取れて、定年まで働ける自衛官として将来が約束されている“高等工科学校の生徒”という身分は、ハードでありながら、とても魅力的なものと言えるでしょう。