自衛隊には独自の教育システムがあります。
陸・海・空それぞれに独自の学校があり、“教育隊”という部隊もあります。
いずれも専門性が高いカリキュラムを擁しており、自衛官として働くためには必ずいずれかの学校に入る経験をしています。
同業他社的な組織である警察や消防も同様ですが。
こうした学校に入って教育を受けることを“入校(にゅうこう)”と言います。
陸・海・空それぞれに特色はありますが、ここでは“自衛隊における基本的な入校システム”について紹介しますね。
「自衛官の彼氏が入校になるそうだけど、時期はいつからなるの?」
「どのくらいの期間、そこで過ごすの?」
「その間、連絡は取れるの?」
と不安になっている皆さん、ぜひ参考にしてくださいませ。
入校中は遠距離恋愛になりやすいので、不安になりますよね。頑張って乗り切りましょう!
自衛隊の入校時期は?そもそも入校ってなに?
自衛隊に入った段階で最初の入校がある
まず、自衛隊に入る最初の段階から“入校”があります。
防衛大学校や高等工科学校といった“学校”からではない、一般の高校や大学から自衛官を目指して入隊してきた自衛官候補生たちに、「自衛官としての心得や立ち居振る舞いから、自衛官として最低限必要なベースとなる知識と技術の修得、体力向上の訓練」などの基礎課程があります。
専門的な言葉にすると「教練 及び 体育の基本動作、並びに服務等の基礎的事項の修得」となります。
これは「気を付け」、「右へならえ」、そして自衛隊ならではの「敬礼」などといった号令・動作の超“初歩”を身体に染み込ませることから始まる基本の教育です。
最初の入校期間は?
ちなみに航空自衛隊の場合はこの入校期間は「約三か月(14週間)」。です
営内(基地の中の宿舎)に起居し、朝目覚めた瞬間から消灯まで細かく管理されている生活が始まるのです。
基地の外に出ることも週末限定で、しかもグループ行動!という厳密さです。
そこで“二等空士”に任命されて初めて自衛官として働くことができるのですが。
その先もまだまだ教育(入校)は続きます。
自衛隊は術科学校という入校もある
自衛隊には“術科学校”という独自の教育システムがあります。
航空自衛隊の場合
例えば航空自衛隊を例にすると、以下の5校、そして教育隊へと進むのです。
- 第1術科学校(浜松基地):航空機および関連機材、兵装等の整備・運用
- 第2術科学校(浜松基地):レーダーや高射兵器等の整備・運用
- 第3術科学校(芦屋基地):総務・会計・補給・輸送等
- 第4術科学校(熊谷基地):通信・情報・気象等
- 第5術科学校(小牧基地):航空管制等
陸上自衛隊・海上自衛隊にも同様のシステムがある
陸上自衛隊・海上自衛隊にも同様のシステムがあり、期間や順番に違いはあるものの「一人前の自衛官を育てるためのシステム」が運用されているのです。
それぞれ、国家試験レベルのスペシャリストを養成するコースが設定されています。
入隊後、基礎課程の期間中に適性を鑑みて「その後の進路が決定される場合」も多いです。
自衛官としての基本的な教育が終了した時点で、上記のような学校に分かれて所定の教育を受け、全国の部隊に配属されていくことになります。
パイロットの場合は
また、航空機の操縦士などは採用の時点で適正と能力から選抜されて入隊し、一人前になるまでの間(全国の教育隊と術科学校を経て部隊配属になるまで)、「ほとんど入校しているのと同等の日々」を過ごしています。
この教育期間中は「大学受験レベルの勉強」を行います。
というのも、「自衛隊独自の資格」か「国土交通省などが管轄する専門的な国家資格」を取得する必要があるからです。
なので、各自が必死で勉強していますよ。
その他、特殊な教育や資格のための入校もある
また、各々がこうした専門性の高い資格を取得して各部隊に配属されたのちも、例えば「英語や中国語など実務に必要な語学教育」や、最近では「サイバーテロなどに対抗するための教育」などもあります。
「ひと月程度の短期の入校」もあれば、その分野に関して素人同然から即戦力になるまで「3か月~半年という育成期間」をかける場合もあります。
いずれも国民の血税から給料をいただきながら、最後の試験には絶対に「合格しなければならない」という相当なプレッシャーのもとに入校生活を送っているのです。
幹部自衛官は入校必須!?
ここまで説明した入校の多くは「結婚しているかどうか微妙な20代半ば~30前後」ですが。
実は、入校は30代~40代後半まで続きます。
階級が上がるごとに入校がある
前述のようなプロフェッショナル育成のとは少し傾向の違う学校があります。
階級が上がることによって必要になる“入校”です。
任期制の自衛官から、“正社員”的な自衛官である“曹”になったとき。
そして幹部自衛官になったとき。
陸・海・空ともに、それぞれの階級に見合う、然るべき教育を受けるために以下のような課程があります。
- 曹候補生課程(20代)
- 幹部初級課程(20代後半~30代前半)
いずれもその時の成績がそれからの仕事の評価や昇進に直結しますので、それぞれの課程の学生は必死で勉強しています。
そこからさらに厳しい選抜を経て以下の課程(半年~1年)に進む人がいます。
- 指揮幕僚課程(30代前半~中盤)
- 技術高級課程(40代)
- 幹部特修課程(40代)
- 幹部高級課程(40代)
陸・海・空それぞれの幹部学校に設けられたこれらの課程で学ぶのは、「安全保障や戦略、国際法、指揮・統率・管理、そして防衛関係の研究全般」ですが、そのレベルは専門性の高い大学院レベルだといわれています。
これも最後に論文発表や口頭試問などでその研究の成果を評価されることになります。
自衛隊入校中の生活の様子は?
入校中の学生の生活は、その階級によって大きくかわります。
基礎課程や曹候補生課程の場合
入隊当初の「基礎課程から曹候補生課程まで」はその生活が厳密に管理されます。
営内で起居する場合には、外出も、申請の上で許可が無ければできません。
消灯時間も23:00となっています。
自由時間もありますが、課題や試験勉強があれば、消灯時間までの間も遊んでいる暇は殆どありません。
幹部初級過程の場合
幹部初級課程は、これもまた全国から幹部学校に集められた学生らが営内で集団生活をしていますが。
同様に多忙ではあっても、幹部であることから規則で制限されることは減ってきます。
指揮幕僚課程以上の場合
指揮幕僚課程以上の学生に関しては、それ以前の課程とは異なり、基本的に「幹部学校へは自宅または官舎から通学」します。
ただし、幹部学校に泊まり込みで課題を消化したり、研修で国内外を移動するなど、生活パターンは不規則になりがちです。
入校中に連絡はとれるの?
基本的にはスマホで連絡がとれる
入校中に連絡はとれるかどうか心配だと思いますが、基本的に入校中は「携帯電話の持ち込みOK」です。
なので、メールやLINEのメッセージのやり取りは可能ですよ。
もちろん授業中や課題・試験勉強をしている間にはそうしたものを見ることはできません。
営内居住の曹士の課程の学生は消灯後のスマホの操作は厳しいはずですし、SNSの書き込みに関しても規則がありますので、むやみに写真などのやり取りもできません。
時間は制限されますが、それでも「全く連絡がとれない」という事はないでしょう。
試験前は音信不通になる場合も
ただし、大学受験以上のカリキュラムを消化している多忙な時期には、そんなメッセージにレスをするゆとりもないはずです。
「せっかくメールしたのに返事が無い」とか「既読無視?!」といろいろと考えてしまうこともあるかもしれませんが。
自衛官にそうしたマメさを期待するのはやめておきましょう。
彼らはその時期「自分と、そして周囲のライバルと戦っている」のだと思って、応援のメッセージを時々送り、すこし距離を置いて眺めているくらいがベストだと思われます。
大丈夫。
その課程を無事クリアできれば、しばらくは平穏な生活が続くはずですから!