全国を転々とする自衛官は、基本的に「勤務地にすぐに出勤できる距離に住むこと」を義務付けられています。
若いころや、一定の訓練期間は「基地・駐屯地の中(営内)の寮」に住みますが、ある程度の年齢・階級、そして結婚したら「基地や駐屯地の外(営外)」に住むことが許可されます。
ただし、その場合でも災害や事故など緊急時の呼集に応じられるように、「基地・駐屯地周辺の官舎に住むことを推奨」されているのです。
また、全国を転々と転勤して回る自衛官にとっては、その度に住居を探すのが大変。
敷金・礼金などの費用を考えると、初めての土地に転勤する際には「ひとまず官舎に入って生活する人」がほとんどです。
ここでは、自衛官妻である私が「官舎(宿舎)に住むことのメリット・デメリットを“妻”の立場で分析」してみました。
官舎に住むか、近くのアパートやマンションに住むかで悩んでいる自衛官妻の皆さん、ぜひ参考にしてくださいね。
官舎に住む前って「実際に、住んでどうなんだろう?」と不安になりますよね。私が嫁(女性)の立場で紹介しますよ!
自衛隊の官舎(宿舎)って?
官舎の建物ってどんな感じ?間取りは?
自衛隊の官舎は、だいたい「基地・駐屯地周辺~数キロの範囲に建てられている集合住宅」です。
30年ほど前までは戸建ての住居もあったそうですが、古くなったために建て替えられたそうで。
現在はほとんどの場合「一棟20~30戸が入居できるタイプの団地」になっています。
基本的に「4~5階建て、エレベーター無し」というのが普遍的なスタイル。
が、場所によっては「6~8階建てのエレベーター付きの建物」もあります。
部屋の間取りは2DK~3LDKで、その年齢・階級・家族構成などによって適宜割り振られます。
新しくて広いところはまず幹部が使う場合が多いですが、定期的な転勤があるため、比較的回転が速く。
「数年でいろんな階級や年齢の世帯が入り混じる」ようになっていきますよ。
官舎は作りが簡単で住みにくい!?
自衛隊官舎の仕様は少々特殊で、民間のマンションやアパートと比較すると「作りはチープかつハード」。
ごく普通の住宅設備は整っていますが、最新とか、高級なものは使われていません。
また、防衛省は“生命”にかかわるところ以外にはお金をかけないので、「風呂の給湯器が昭和の名残のあるバランス釜」だったり、「北側の窓に網戸が無い場合」もあります。
断熱材が薄い!
私が住んでみて最も驚いたのは、断熱材の薄さです。
壁が「コンクリートにペンキという仕様」なのですが、冬になると結露でびっしょり濡れ…。
「油断するとカビが生えてしまう」という恐ろしい状態になりました。
これは、数ヶ所の官舎で経験しているので、いずれも同様の壁の作り方になっているのだと思われます。
「薄さ、というより恐らく断熱材が殆ど使われていないコンクリート打ちっぱなしではないか」、という話をママ友たちとよくしましたよ。
が、皆さん冬になるとそれぞれ工夫をして結露の対策を行い、快適に暮らしています。
現在は、結露対策も色々とできますしね。
快適に住む工夫を皆さんしています
トイレや洗面所などは配管が剥き出し(ペンキ塗装のみ)だったり、ラフな仕様が多いです。
なので、温水便座を自分でつける人が多いですね。
キッチンは換気扇もシンプルなタイプが多く、古い建物ではシンクにガスの瞬間湯沸かし器が付いている場合もあります。
コンロは基本的に自分で持ち込みです。
その地域に合った仕様のもの(都市ガス・プロパンガス)で安いものを購入して、2~3年で使い捨てにしている人も少なくありませんでした。
それでも敷金礼金がいらないのは助かる
しかし、何と言っても敷金礼金がかからず、急な引っ越しでも部屋が用意されるというのは助かりました。
普通に暮らす分には必要十分な物件が多いので、一度は住んでみることをおすすめします。
その間に貯金して、将来的な諸々に備えるというのも立派なライフプランです。
自衛隊って定期的に転勤がありますからね。
毎回「自分でアパートを探して、さらに敷金礼金まで支払う」と思えば、官舎に住んだ方が経済的にも精神的にも楽なんですよね(笑)
妻から見た自衛隊官舎のメリット
家賃が安い
自衛隊官舎のお家賃ですが、基本的に「周辺のアパートやマンションの相場より安い設定」になっています。
都市部と郊外では設定に違いがありますが、3LDKで3万円台など、かなり安価です。
多少立地や設備が不便でも、家賃を「将来のための貯蓄をする人」も少なくありません。
転居先にも頼れる人がいる
官舎には、同じ職場の人が多く住んでいます。
転居した日から全くのスタンドアローンという訳ではなく、上官や同僚、その家族など「困ったことを相談できる人」もいます。
また、官舎生活が長くなると、転居を繰り返して「また違う任地で友達と再会する」こともあります。
そうした生活を続けていくと、夫の職場だけでなく「妻たち自身のネットワーク」ができてきますよ。
今はSNSが発達してきているので、ママ友同士のお付き合いも継続しやすいですしね。
自衛官ママ友がいれば、転居後でもすぐに情報が手に入る!
こういった「自衛官妻同士の付き合い」というのは、本当に助かります。
「若い世帯」、「小さな子供がいる世帯」、「子供が小学生以上の世帯」など…状況によって、お互い情報交換したり、困った時に助け合ったりすることができるんです。
「役所・買い物・病院・学校・幼稚園」などの生活に必要な情報は、ママ友ネットワークを使えば転居後数日で全て知ることができますよ♪
全国どこでも安定・安心した生活ができる
場所によっては「基地が山の上」だったり、「都市部から離れたところ」にあったりする場合もあります(特に航空自衛隊の基地)。
そうなると、学校が遠かったり、買い物に時間がかかるなど不便もありますよね。
ですが、「同じ状況で生活している家族が沢山いる」ということで、安心感があります。
ちなみに、こういった「街から離れた場所にある基地」であっても、今はネット通販などもあるので、以前よりも住みやすくなっていますよ。
妻から見た自衛隊官舎のデメリット
人間関係が濃すぎる
夫らが同じ職場・職種で勤務している場合、家庭を含めて人間関係とその距離感が近くなりすぎて、息苦しいと感じる人もいます。
同じ環境でもそれを快適と思う人がいますし、個人差はありますが、こうした距離感は諸刃の剣ですね。
お互い助け合うこともできますが、プライバシーに踏み込まれ過ぎるとストレスにもなります。
ちなみに、若い世代が多ければ、官舎の中やその周辺でママ友・公園デビューなどが必要になってきます。
私の場合、そうしたものも含めて「官舎は人間関係の修行の場」だと思って過ごしてきましたね。
しかし、こうしたママ友との関係性は「災害やトラブルがある時には一丸となって対処できる」という意味で大きなメリットでもありますよ。
建物が古い・汚い・ボロい
官舎には「築20年~30年以上の集合住宅」が当たり前にあります。
もちろん、必要に応じて改修はされていますが、新築や築浅の建物に当たることは少ないですね。
基本的な設備も必要最低限なので、快適な生活に慣れている人には不便や物足りなさを感じることもあるはずです。
快適な生活のために、必然的に掃除やDIY、収納などのスキルが向上していきますよ。
ある意味、段々と逞しくなっていきます(笑)
自衛隊官舎のメリット・デメリットまとめ
官舎生活は、メリットもデメリットも表裏一体です。
転勤は不安もいっぱいですが、官舎での生活は楽しいことも沢山あります。
プライバシーの問題や、距離感など、悩むこともありますが、そうした部分を含めて「ある程度の割り切りと、乗り越える逞しさ」があれば、官舎を含めた自衛隊での長い生活を楽しむことができるはずです。
そうした苦労を乗り越えて得た人間関係やスキルは、暮らしを豊かにしてくれますよ。
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